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筋電メディカル徒然日記

2021年10月15日

徒然日記 40
待ちに、待ったる!

京大の森谷敏夫名誉教授が、現在開発している新たな「筋電メディカルEMS」の話をしているのを拝聴した。すると、50歳くらいからの人の多くに身体の不調があることを知った。車椅子生活を余儀なくされた方、神経を痛めてしまって他人と同じように歩けなくなった方、杖に頼っている方が、懸命に教授が書いた筋肉の本を読み漁っていると聞いた。誰にも言えない悩み、誰にも相談できない悩みを持つ人たちが、こんなにも大勢いるとは知らなかった。
「もう、あきらめたよ、この身体と付き合っていく他にないみたいだからさ!」
年をとると“ガタ”がくるよ、と昔から聞いていたが、長寿社会になっても身体の悩みや痛みは、昔と同じ年頃にやってくるらしい。それが長寿社会になると、何十年も抱えて過ごすことになる。
 
しかし、身体の不具合に関しての医学的進歩は凄いのだ。「あきらめるのは、早すぎる!」と森谷教授から教えを得ている私は、悩みや痛みを抱えている人たちに、言いたいのだ。「あきらめる」と思考が止まってしまうよ、思考が止まれば、進化した新しいモノができていても受け入れようともしないし、探しもしない。ただただ、痛みや悩みに耐えているだけだと思うよ、と。
 
かく言う私だって75歳である。後期高齢者になった。
以前、家人から「あなたが歩くとスリスリと音がする」と言われていたことがあった。足が上がっていないのだ。自分では気がつかなかったが、身内に言われるのは辛い。辛いからこそ「なにクソ~」という気になった。
約半年前から私は、森谷敏夫理論の器具を使って毎日寝る前にテレビを観ながらEMSで筋肉の増強を図っている。私は、趣味でドラムを叩く。バンドの一員でもある。少し前になるが、バンド仲間から「ドラムの音が変わったね」「ものすごく切れ味が良くなったね」と褒められた。私は知っている。自己練習は欠かしていないが、これも筋肉の仕業であることを!
 
しかし、旧バージョンの器具には限界があった。森谷教授の話によれば、筋肉は負荷をかけることによって強くも増すこともできる。教授に私は次の質問をしたことがある。「75歳から初めても大丈夫ですか?」と。教授の答えは「もちろん大丈夫ですよ、特にあなたは、中学、高校と陸上部の短距離の選手だったから、速筋、特に細胞の核にあたる所が記憶しているからね。あなたの筋肉は、たぶん遺伝で短距離に向いている筋肉だと思う。ただ、前の器具だと負荷に筋肉が慣れてしまって限界がくると思うんだ。だから今、新バージョンを開発しているんだよ」
 
今、森谷教授は新バージョンの器具をテストしている。新バージョンでは、ボタンひとつで使う人に合わせられるから、時々テストに参加するが、大きな負荷が欲しい私の筋肉は喜んでいるようだ。
 
筋肉は、内臓のひとつ。心臓も肺も血液の循環も、胃も腸もあらゆる臓器は筋肉で動く。もちろん、手や指を動かすのも、足を動かすのも同じだ。
「電気を身体に伝えても大丈夫ですか?」と訊くと、教授は「元々脳からの電気が神経を伝わって筋肉は動いているからね」と。スリスリから解放される!もうすぐ、できあがるという。

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹