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筋電メディカル徒然日記

2021年11月05日

徒然日記 43
アルコールの善し悪し

オフィスから自宅の最寄り駅に降りると、最近開発が進んだ街の便利さがある。雨が降ったり、大風が吹いたりすると、その便利さが身に染みる。地下鉄を降りると、よっぽど土砂降りでなければ、自宅のドアまで傘がいらないのだ。もちろん、ちょっとは表を歩くのだが、10歩くらいで傘を開く間もない。
土地の高騰が進み、以前から代々住んでいる人は良いが、核家族化が進み自分の棲家を新たに買おうとしても、東京生まれ、東京育ちであっても都心に家を持つなど夢のまた夢になった時があった。土地が高騰しても建物を高層化すれば、結果土地の値が安くなる。我が街は、そんな街造りのテストケースだと思う。
 
新型コロナが流行し始めたころ、お医者様たちは、マスクや手洗い、ウガイを推奨していた。もう薄い記憶になるが、石鹸のない時は、水で15秒手洗いすれば菌を流し落とすことができるとテレビニュースでお医者様が言っていた記憶がある。ところが現在、駅からの帰り道にアルコール消毒液の通過地点の多さにびっくりする。
まず、地下鉄の通路からビルに入る所、エスカレーターで昇り隣のビルに行く所、渡り廊下で隣のビルに入る所、ビルを出る所、マンションに入る所と、最低5カ所で手をアルコール消毒せねば家にたどり着けない。それに、パンでも買おうとすれば入口に1カ所、レジ脇に1カ所、ちょっと100均でも寄れば、+1。ついでにユニクロでも覗けば、また+1及び採熱!これでは、アルコール依存症である。
 
この10月最後の月曜日から、東京の85%の飲食店が通常の動きで商売することを許されるようになった。しかし、そのためには、お上から与えられた約束事を守らなければならないだろう。私は、都からのお達し、そこになにが書かれているか知らないが、以前と同じに“手洗いのためのアルコール消毒液を設置すべし”も書かれているのではないか?私は、高血圧症の薬や逆流性食道炎の薬をもらうために主治医の診断を毎月受けている。アルコール消毒液は置いてあるにはあるが、目立つ場所にはない!歯医者にも通っているが、ハイテクな水の噴霧でアルコールの匂いがしない!
 
私には2歳年下の従妹がいた。私の婆様が、その娘を可愛いがり過ぎた。赤ちゃんの時から、その娘が口に入れるモノ、入れそうなモノの全てをアルコール消毒していた。いつだったろうか?その娘が、20代の頃だったと思う。彼女が私にそっと「私ね、40歳まで生きられないと思う」と言った。的中してしまった。39歳で彼女は、天に昇っていった。残された叔母が「あの子は、お婆ちゃんに殺されたようなものよ」と悲しげにつぶやいたのを思い出す。あまりにも大事にされ過ぎてアルコール消毒に頼った挙句に、身体が無菌状態のようになり、菌に対して免疫力がなくなってしまったのかも知れない。
2年くらいの習慣では、そのようなことは起きないだろうが、あまり続けるのは良いのか、悪いのか、知りたい。コロナに勝って、今まで何も起きなかったはずの菌に敗れるなんて、何となくバカバカしいのだから!
 

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹