TSUREZURE

筋電メディカル徒然日記

2022年10月07日

徒然日記 89
女と男

そういえば、1966年のフランスの映画に「男と女」というタイトルがあった。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した映画だった。
 
夫ピエールを事故で亡くしたアンヌをアヌーク・エーメが演じ、妻を自殺で失ったルイという男をトランティニャンが演じた。娘を寄宿学校に預けて、パリでひとり暮らしをしていたアンヌが、娘に会うため寄宿舎に行った帰りに、パリ行きの列車を逃してしまう。そこに同じ寄宿学校に息子を預けていたルイが車で送ると申し出たのが始まりだった記憶がある。フランス恋愛映画の名作のひとつだった。
 
日本では、1966年10月の封切で、映像とともに“秋”にふさわしい映画だったことを思い出す。映画に興味がない方でも、この映画の中で流れる曲「ダバダダバダ」のスキャットから始まる主題歌を一度は、聴いたことのある人は多いだろう!大人の色気ムンムンが曲から感じられるこの楽曲は、監督のクロード・ルルージュの盟友でフランスの天才作曲家であるフランシス・レイが作曲したと聞く。私のスマホにも入れてある素晴らしい曲だ。
 
人間は、ふっとしたことから恋が始まる。私は、もともと人間は人間にしか興味を持たないと考えている。
「いや~ぁ、それは嘘だね!うちのチョコというワンちゃんは……」「猫ちゃんのホビーがね……」動物愛好家の方々の非難を浴びそうな言い方だったが、ワンちゃん、ニャンちゃん、多種の動物を愛する人たちを観ていると、みな擬人化している。ワンちゃんに「ハイ、お散歩行きましょうねぇ、お外はさむさむだから、ちゃんとお洋服着てねぇ、あの買ったピンクの靴下履きましょうね、クックも可愛いでしょ!」とか「ほらニャーちゃん、こんなとこでチィーチしちゃいけないでしょ?こんなに立派なトイレを買ってあげたじゃない!さ、ここにエンチャして、ほら、チィ~ぃ」
自分の娘や息子にもしなかったことをやっている。立派な擬人化で、猫は猫、犬は犬の世界があるのも忘れ、ヒトの世界に嫌がる彼らを引っ張りこもうとしている。それも赤ちゃん言葉でね。これも、人間にしか興味を持たない人間の表れだと思っている。
 
6月、7月の『情報素材料理会』では、京都大学大学院医学研究科 婦人科学産科学の江川美保先生が、また8月、9月では、産婦人科医で、京都大学大学院医学研究科 健康情報学の池田裕美枝先生がお話くださった。江川先生の主題は『女性にとって「月経のしんどさ」は生活、仕事、対人関係、さらには自尊感情をも揺るがす大きな問題、から「更年期のみかた」まで、女性の一生の身体のケアを中心』に述べられ、池田先生は『女性の性成熟期から性と生殖に関する健康と権利SRHRに基づいた包括的性教育の社会インフラとしての必要性』を述べられた。
私は、お二人のご意見を拝聴しながら考えていた。私が生業とした文学も「人間への興味」だ。医学と文学という違った方向から人間を見ている。作家の渡辺淳一さんも『くの一忍法帳』の山田風太郎さんもお医者様です。
さて池田先生からのメールに「ちょっとどぎつい表現が多すぎたかも知れない」と書かれていました。人間の興味は、性からあるのですが…!
 

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹