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筋電メディカル徒然日記

2023年06月30日

徒然日記 113
老いの健康術

学生時代の4年間、私は見様見真似でドラムを敲いていた。言葉通りのドラ息子である。楽器さえ持っていれば、アルバイト先には困らない。叩き方は、当時アメリカやイギリスなどからよく来ていた外タレ、出稼ぎ有名バンドの傍で聞いて覚えた。当時、ピアノやバイオリン、ギターなどを教えてくれる先生はいたが、ドラムなど軽音楽の先生はいなかった。芸大出は、みな交響楽団の一員になることが夢だったのだろう。
ひと昔前、文学といえば、純文学を指し、大衆文学がバカにされていたのと同じである。軽音楽は、バカにされていたので、教室が無かった。プロドラマーのほとんどは、進駐軍の米兵から習っていたのに違いない。
 
私は、就職をしてからも、誰かの結婚式の余興などでバンドのメンバーに集合をかけ練習をした。漫画の原作者牛次郎さんと“牛ちゃんバンド”を結成し、歌手が作家の志茂田影樹氏だった時もある。しかし、ドラムの練習もとぎれとぎれであったし、ちゃんと習っていなかったことでバンドも自然消滅してしまった。
 
ちょうど10年前、仕事が楽になったころだった。認知症予防と運動不足予防に何かしなければと思い、苦手なゴルフを止めて一から先生に教えてもらうことにした。私は、ハマるとなかなか止めない!ハマるか、ハマらないかは、面白さで決まる。基礎編は、五木ひろしや吉幾三の担当ドラマーに習った、4年間くらいだったと思う。
 
次にドラムの本場アメリカ、のジャズを習うことにした。音大出のジャズの先生は、若かった。本業は、所属しているジャズバンドだそうだ。軽いテストがあった。4小節、1小節目が第一譜にアクセントをつける。右手だ!2小節目が第二譜にアクセント、左手!なんとか合格、素人ジャズ初級が始まった。
 
最初のころ、涙がぽろぽろと零れる。聴いたことのあるフレーズだが、敲けないのだ。悔しい!ゆっくりと、しかし正確に。速さは、先生は教えられない。授業時間は、30分、私は、自己練のために月曜と木曜をドラムの日と決めた。木曜は教室もある。時間は、3時間!4時間やってみたが、集中力と体力がもたなく1時間ボーっとしてしまう。
 
中級が終了したころに、コロナ騒ぎがあった。こちらは、老人だ。2年間教室を休んだが、週に2度の自己練習は続けた。初級と中級を暗譜で速く打つ練習を。それが出来なければ上級のフレーズが敲けない!先生の30分の間で、前回教えてもらった敲き方を5回正確に打てないと次に進めない。先生には、来年の9月に卒業したいと伝えてある。終わって78歳、速く打てるようになる歳が、80歳。
 
森谷敏夫教授の筋電メディカルEMSで体の筋肉を鍛えると、音が違う。
ドラムは、大きく打つのは、難しくはない!小さく打つほうが難しい。技術と筋肉力が必要だからだ。5回敲けたフレーズは、頭の中から追い出す。体が覚えたことを信じる。それでないと、新しい技術がつい顔を出してしまう。また先生もあえて間違えそうな似た譜面を課題にするのだ。体が覚えている、自分の脳が覚えてくれている。はずだ!いったん忘れよう、次の技術を覚えるために。脳が体の筋肉を少量の電気で動かしてくれる、自分の筋肉と脳を信じよう!人間が歩けるようにね。私は、ドラムの一部になりたいのかも知れない!

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹

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