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筋電メディカル徒然日記

2021年05月21日

徒然日記 19
EMSの効用

日曜日だったか、テレビを観ていたら海外のアンビリーバブルな話をやっていた。主人公は子供である。車椅子に乗った少年は、小児麻痺で下半身が動かないと陰の声は、語る。少年は、普通の小学校に通っているらしいが、体操の時間にグラウンドを見つめている。そこには、クラスメイト達がサッカーに熱中している。
「ボクは、サッカーが好きなんだ!動けるようになったらサッカー選手になるんだ!」陰の声は、少年の言葉を通訳している。この段階で私は、ふと森谷教授の筋電メディカルEMSを思い出した。「きっと、EMSが何らかの部分でこの子の役に立ちそうだな!」と、思ったからだ。
 
場面は、両親に付き添われて病院のドクターと話をしている少年の顔に変わった。「キミが車椅子の生活を送らなければならないのはね」ドクターは、優しく少年の顔を見つめながら言っている。「キミの脳と下半身を繋いでいる神経が生まれた時から切れているからなんだよ」ますますドクターは優しい顔になって、少年に語った。「ボクがその切れた神経を繋いであげるからね」
少年の顔が、パッと輝いた!「ボク、もし歩いたり走ったりできるようになったらサッカーをしたいんだ!」少年の顔には、まったく陰りがなかった。観ている私のほうが「大丈夫かな?」と、訝ったほどだ。ドクターは「手術をしなければダメなんだよ!キミならば頑張れると思うね、強そうだから!手術は、痛くしないよ!キミが眠っている間にボクが治すんだからね、きっと友達とサッカーができる日が来ると思う」
少年のそばにいた両親が口々に「よかったね!」と言い頬ずりをする。彼は、誇らしげにドクターを見上げ「ボク、歩けるようになったら友達とサッカーをするんだ!」と言っている。
 
場面は、ストレッチャーに寝かされた彼が手術室に入るところになった。両親は、にこやかだが、心は心配で膨れ上がっている様子である。ママが彼の頬にキスをする。「ボク嫌だ!怖いよ~ぅ!嫌だよ~ぅ!」スパイダーマンのぬいぐるみを抱きしめて少年は、大声で泣きだした!困り顔の両親を残してストレッチャーは、手術室の扉の中へと消えていった。
 
「少年の手術は、成功した」と陰の声が語る。車椅子の少年は、リハビリのドクターに付き添われている。両親が見ている。車椅子のステップの部分の少年の足がクローズアップされた。初めて歩くのだ!リハビリのドクターは、横から彼の胸を2本の指で支え、お尻を3本の指で支えている。まるで、初めて自転車に乗る時、父が荷台を掴んでくれた時のようだ。「離さないでよ!放さないでよ!」私は、父に叫んだ時のことを思い出した。
少年は「大丈夫、ボク歩けるよ」と言いながら、ヨチヨチと母の広げた両手に向かった。感銘と歓喜。少年は、目隠しされていた。目隠しを外すと、そこは、スタジアムの芝の上!全てのプロのサッカー選手が彼の頭を撫でていく。彼がとくに応援している選手が、彼の耳元で「キミから大きな力をもらったよ!」と言う。「この少年は、かなりキツいリハビリに耐えて、ここまで来た!」と、陰が語る。少年は、ゴールの前に立ち、着ぐるみを着たマスコットのキーパーが阻むゴールを狙い蹴った!3球とも“ゴール!”の声が、ピッチにこだました。
 
あの少年の両親やドクターが、森谷教授の筋電メディカルEMSを知っていたら、あの子は、もっと楽にリハビリできたのにと、私は思った!
 

その後、今回分を読んでくださった森谷教授からコメントをいただいた。


下半身まひの子供のお話が出てきましたが、今アメリカなどでは、脊髄損傷の患者さんにEMS装置を埋め込んで、損傷部位付近を刺激しながら筋収縮を自分の意志と合わせて行っています。この時、神経細胞が再生される刺激になるのですが、筋肉から放出される「脳由来神経栄養因子(BDNF)」の遺伝子がその役目を担います。
 
筋電メディカルEMSで大筋群を刺激すれば、BDNFが増加して脳の海馬の記憶や学習能力を高めるだけでなく、体全体の神経にも働く可能性があります。埋め込み電極を使わなくても、脊損(せきそん)のリハビリに有効かもしれません。いろいろなヒト試験が今後なされると思いますが、早く筋電メディカルEMSを完成させて、ビジネスも研究も進められるようスピードアップしたいですね!!

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹