2022年04月01日
徒然日記 63
私見「文献言語解釈」
第4話 自律神経
私は、67歳まで出版社で働いていました。主に文藝畑です。
文藝畑とは、作家に小説を書いて頂いて雑誌や単行本を造る役目を持つ編集者のことで、今回は滅茶苦茶な生活をせざるを得ない月刊小説雑誌の日常に焦点を合わせて書いてみます。
会社によって違うでしょうが、私の所属していた小説誌の編集部は以前7名の編集者で構成されていました。
まず前月号の雑誌が印刷・製本にかかる頃、前月号を「もうこれで直しませんから印刷してくださいね、赤字のある場所を責任もって直して印刷してください」そしてこれを、編集長が「責了!(責任校了)」と言って印刷所に渡して仕事が終わります。クタクタの編集部員を1日休ませ、次の号の編集会議を始めます。
連載小説は、ひとりの担当者が受け持ち、私は、池波正太郎氏の『鬼平犯科帳』を担当していました。もちろん話の進み具合では、単行本を創るために1年くらいの連載もあるので、ひとりの担当者が幾つか連載を担当することもあります。
さて、編集会議では「次号は時代物特集をやるぞ!」とか「官能小説特集だ!」「直木賞作家の特集で行こう!」編集長が決めておいてスタート会議は進みます。この時、各編集者は担当している作家や他社からの評判を聞いていた新人作家の名前を出すのです。決まりものエッセイ頁やグラビア頁は「この頁は◎◎先生に頼んでくれ!」と編集長から担当者に言われます。会議は、そればかりではなく、編集者からも頼み事をします。「◎月頃から、この先生は時間が空くので書いてもらっていいか」とか。議題は、さまざまです。
会議が終わると皆自分の机にある電話に飛びつきます!エッセイなどは、電話の依頼で済むことも多いですが、小説はそうもいかない。ファックスもスマホもない時代で、コピー機さえワンフロアに1台共有機として鎮座ましましている時代なのです!パソコンなんてありません!電話で作家にアポイントをとり、編集の皆散らばって行きます。
作家の仕事時間は、朝型、昼型、夜型と様々ですから、編集者は、どの時間にも対応するのです。できた原稿を千葉でも、田園調布でも、東京近郊、電車に、バスにと、いただきにあがります。何枚かずつ分散される時さえあるのです。何度もいただきに行かねばならないのですよ!
その合間に、年に3度ある新人賞の原稿や、年に2度ある直木賞・芥川賞を読む仕事もあります。そして作家からいただいてきた原稿を、4、5回読み、時代的に間違いがないか?前後の意味に齟齬はないか?を探して直します。同時に校正者にも読んでもらいます。校正は、単なる間違いを探したり、文字の統一を図ったりする。校閲は、その小説に書かれた話が年号的に正しいか、人名の文字が正しいか?やることが沢山あるのです。それを作家に電話で確認しながら編集者は仕上げていきます。
印刷所は、サラリーマンですから朝の8時半頃始業し、夜の5、6時に仕事を終えます。編集者の仕事は、普通の時間帯に生活をしている人たちの後の仕事ですから、24時間営業の時もあるし、寝る時間があっても普通の人の時間と逆になるのです。
私が編集者を終えて普通人として生活をしようとした時に、困った問題を抱えてしまいました。生活が不規則、夜型人間だったからです。夜になっても眠れなかったのです。
森谷敏夫教授の『京大の筋肉3』に自律神経の話が出ていました。人間の全ての臓器は自律神経が制御しているとあります。自律神経は、朝の目覚めとともに心拍数を高めたり、いろいろなホルモンをしっかり出したり、体温も上げ、免疫機能を高める「さぁ、起きて働こうぜ!」という交感神経と、交感神経ばかりでは疲れるので、日が暮れる頃には副交感神経が一日の疲れを取るようにむっくり立ち上がり「もうゆっくりしようよ、明日のために安らごうね」と食べ物の消化吸収をよくして、リラクゼーションを促し、血流をよくし、食べものを体の中にうまく貯蔵してくれてエネルギーを蓄え、健やかな眠りへと導いてくれます。このように自律神経には、交感神経と副交感神経とがあり、役割を分担し、スムーズに交代してバランスよく働くと、体調は自ずとうまくコントロールできるようになっていると本には書かれています。
では、私のように食事や睡眠が不規則な人間、そして、今流行りのスマホやパソコンでのゲームで不規則な生活を送るようになった人の自律神経は、整うのでしょうか?
教授は「自律神経は回復する」と続けますが、それは、次回書かせて頂きます。