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筋電メディカル徒然日記

2022年11月11日

徒然日記 94
主治医の検診

22歳からずっと長い間、出版健康保険組合にお世話になってきた。
出版社は、仕事内容上生活が不規則になる。なにしろ、作家相手の仕事が多いから、いつ出来上がってくるとも知れない原稿をひたすら待つ仕事なのだ。夜中書く作家の原稿は、朝出来ることが多い。それも早朝4時ころから昼ごろまでの何れかだ。朝から書く作家は、昼過ぎ2時から夕方5時の間に書き上げる。早く終えて飲みに行きたいからだ!
 
編集者は原稿を頂きに行き、それから読みながら間違い探しをする。赤字で直す。ある作家の場合、とんでもない間違いを見つけた。3誌同時に書いているから、殺された人間や犯人の名前が作家の頭の中で、3誌に出てくる人の名が混ざってしまっている。死んだはずの人間が生き返って活躍することもある。連載の場合は、編集者は『お名前表』を作って確認しながら読まねばならない!印刷所に泊まり込んで、広辞苑を枕に大きなテーブルの下で仮眠をとるのだ!テーブルの下でなければ、動き回っている人たちに躓かれる。身の安全のためだった。
 
編集者の寿命は、短いと言われている。今は、出版会社のコンプライアンスがしっかりしてきたが、私が若いころは先輩の真似を教えとして動かねばならなかった。今は、もうしなくなったスポーツ選手の兎跳びのようなものだった。わが社も1年に多くの人が亡くなった年があった。総務は、慌てて検診を1年に2度、3度するようになった。私は、仕事をしなかったのか身体が頑丈に出来ているのかわからないが、今の70歳半ばまで元気で生きている。
 
70歳を過ぎても、会社を引退しても出版健保の健康診断は、受けることが出来た。しかし、75歳後期高齢者は、国の保険になる。インフルエンザの予防接種も健康診断も区から送られてくる受診票で行動しなければならない!
 
私は、マンションの敷地内にある主治医のクリニックを選んだ。看護師さんが何人か居て、女性の医師がひとりである。健保組合の時のような医療器具は揃っていなさそうだった。区から送られてきた封筒の中の受診票に受付病院一覧表が入っていて、主治医の病院の名前もある。事前に予約して、今日検診に行って来た。
 
その病院は、循環器系と内科医で大腸がん検査のあのお尻から管を入れるような場所もない。受診票には、大腸がん検診とあるので、どこかの病院を紹介されるのだと思っていた。以前やった大腸がん検診は、2ペットボトルくらいの得体の知れない白濁とした水を2時間もかけて飲まなくてはならなかった!大腸がん検診は受けたかったが、あれが嫌だった。今度はお国のお世話だから、嫌とは言えまい!
 
身長、体重、血圧、検尿。検便は家でしておいたから看護師さんに渡すだけ、胸のレントゲン、そして心電図!はい、終わりですよ~っ!優しく看護師さんに言われた。えっ、あの2、白濁、辛い、2時間、水、えっ!黒い管、パンツを脱がされ、壁に向かわされ、エイヤーとお尻に入れる長い、長い、太い、太い、忌まわしい管は?いつ、終わったのだろう!
 

高松市菊池寛記念館名誉館長
文藝春秋社友
菊池 夏樹